○○○に興味がある小学生

お題「自分が変人だと思ったエピソード」

 

幼稚園年長から小学校6年生まで、地元のピアノ教室に通っていた。初めの頃はモチベーションがあったと思うが、途中からゲームや将棋などに興味が移り、小学校3年生の頃には全くやる気がなくなり、ほとんど練習しなくなっていた。そんなただ惰性で続けている5年生の時だったと思う。とあるピアノコンテストの開催予告が届いた。小学生限定で、自らが作った曲をピアノで演奏するというものであった。師事していたピアノの先生にそのことを話し、考えたのちに出場することに決めた。砂漠のように枯れたモチベーションは回復し、練習に努めた。だがやはりブランクは大きく、なかなか難しかったがなんとか構想を形にできるように、たまに母に手伝ってもらいながら頑張った。

そして、迎えた本番当日。久しぶりのコンテストで緊張は最高潮に達していた。一人、また一人と発表が終わる。他の人たちの演奏全てが、自分のそれより何倍もうまいように聞こえた。自分の番が来るなと願った。しかし、残念ながら時間というのは僕一人の勝手な希望だけで止まってくれものではない。ついに、自分の番が来た。

司会の人が、僕の名前を呼んでから曲名を読み上げた。瞬間、少しどよめきが起こる。それもそのはず。僕以外の子供達は、犬とか猫がどうとか、そんな年相応の可愛げある題名だった。対して、僕の作った曲の題名は『消費税アップ』。突然の社会的なテーマの曲は一際異質な空気を放っていた。当時は消費税が5%から8%に引き上げられてしばらく経った頃だったと思う。だから消費税関連の話題はあらゆるところで俎上に上げられていたが、『消費税アップ』というのは、おおよそ小学生が自作曲の題名には付けないだろう(それどころか、普通の大人でさえ付けないと思う)。良く言えば、幼いうちから社会に対して関心がある子供。悪く言えば、小学生に似つかわしくない可愛げのない子供。どちらにしても、僕はその時確かに変人だった。

そんな子供時代を過ごしたからこそ、現在高校生の僕は同級生の中でもトップを争うくらい政治や経済に詳しく、関心があると自負しているし、社会問題を解決したいという意欲も強い。だから、変人であることも悪くないのかなと思う。

ちなみに、演奏自体がうまくいったかのかどうかは全く覚えていない。気がつけば終わっていた。緊張して臨んだ発表というのは、存外あっけないものがもしれない。